通人に選ばれる酒 長年にわたり「菊水の辛口」をご支持いただいているお店をご紹介。

新橋 「雪國」

200軒ほどの酒場がひしめく新橋は、サラリーマンのオアシスなんて言われている。
そんな路地裏の一角にある居酒屋「雪國」は、昭和55年7月7日、七夕に産声をあげた。それも「菊水の辛口」が誕生した2年後のことである。
藍染に白抜き、雪山がモチーフにされた小ぶりな暖簾をくぐると、店内はいい具合に狭小でカウンター9席のみ。店を切り盛りする女将、石黒千賀子さんの人柄に吸い寄せられるように、毎夜サラリーマン、OLが集い賑わっている。

お勧めの肴は「鯵の甘酢煮」、季節の「自家製カツオのたたき」、「キャベツとコンビーフ炒め」など。酒は各種揃えているが、なんと言っても店の看板に掲げられた「菊水の辛口」がメーンだ。
「開店したばかりのころですね、新潟の姉から『新発田の菊水が金賞を取って人気があるらしいわよ』って聞いたものだから。それで扱うようになったんですよ」
「と言うことは、開店から38年間ず~っと菊水の辛口置いてるんですね。ちょっと一杯いただけますか」
「どうぞ。5時から6時半までタイムサービスなんですよ」
一杯500円の「菊水の辛口」が、その時間帯だけ破格の300円で提供されている。いや~飲み助にはありがたい。
「タイムサービスで6、7杯飲む人いるんですよ…」
「そりゃ凄い!」
冷え冷えのグラスでクイっと一杯、キリっと辛口でほどよい旨味。「鯵の甘酢煮」をいただきながら、また一杯。
「やっぱ美味しいな~」
「このお酒、飲みやすいのは当たり前なんですけど、料理の味を邪魔しないんですよね」
確かに。キレのある口当たりだけど、スッキリとし過ぎない味わいがどんな料理にも合うのだろう。甘口、または淡麗が際立つと途中で飲み飽きてくるけど、菊水の辛口はほどよい旨味も手伝って、いつまでも飲み続けることが出来るのだ。

「カツオのたたきもどうぞ」
カツオに薬味をタップリ乗せてカブリつく。
「菊水おかわりください」
「ね、進むでしょう」
「菊水の辛口」は突き抜けた個性があるお酒じゃない。でもどんな場面でもいつでも安心して飲める普遍的な味わいが潜んでいる。これが日本酒党に長年愛され続ける最大の理由だろう。
「3杯目おかわりします?」
「はいお願いします。ついつい飲んじゃいますね」

開店から38年という「雪國」の営みは、新橋にどっしりと根を下ろした燻し銀の趣がある。女将の人柄、旨い肴と旨い日本酒は、穏やかに心身を癒してゆく。
「もう一杯いただけますか」
「あら4杯目、お強いですね」
酔いに任せてダラダラと時間を貪る、これが酒場の至福のひとときだ。

取材・文/小野員裕

  • 新橋「雪國」
  • 【住所】東京都港区新橋2-10-9 電話 03-3508-9867
  • 【営業】17時~23時(L.O.22時30分)
  • 【休日】土・日・祝
  • 【アクセス】JR各線「新橋駅」銀座口・烏森口から徒歩3分

八王子 京懐石「鶯啼庵」

「菊水の辛口」に惚れ込んでいる飲食店は数多くありますが、いわゆる"大衆酒場"だけでなく"高級料亭"にも、長らく愛用し続けているお店があります。

そのひとつが、東京・八王子の京懐石「鶯啼庵(おうていあん)」。創業20年余りの高級料亭です。

桜、新緑、紅葉、雪景色と、四季折々の美しさを楽しむことができる見事な日本庭園は、どの部屋からも見ることができて、何度訪れても飽きることがありません。敷地内のあらゆるところで日本文化を感じられるしつらえとなっており、結婚前の両家顔合わせや、絶対に成功させたい宴席など、とっておきの日に選ばれる料亭です。

そんなお店で創業当初から置いてある唯一の日本酒が、「菊水の辛口」だといいます。支配人の森田健太郎さんにお話をうかがいました。

「『菊水の辛口』は、とても万能な酒だと思います。スター選手ではないけれど、しっかり実力のある中堅、といったイメージでしょうか。主張が強すぎると好みが分かれてしまいますが、『菊水の辛口』はその心配がなく、良い意味で"とりあえずの酒"として安心して提供することができるんです」

創業当初は他の銘柄も置いていましたが、最後まで残った定番酒が「菊水の辛口」なのだそうです。料理との相性はどうなのでしょうか?「菊水の辛口」に合う料理をつくっていただきました。

ガラスの皿には前菜の盛り合わせ。刺身はカンパチ、ハモ、マグロの3点。ハモはあらい、焼き、湯引きの3つの食べ方で。長芋のそうめんとタコには土佐酢のジュレソース。初夏をイメージした涼しげな料理です。

「私たちがご提供している京料理は、素材の味わいを生かした繊細な味つけが特徴です。ですから、あまり主張が強いと料理の味が消えてしまいます。その点、『菊水の辛口』は、料理をそっと引き立ててくれるのです。酒を楽しむのではなく、あくまで『料理を楽しむ』ためのサポート役をしてくれる、とてもありがたい存在です」

鶯啼庵は、特別な日に選ばれる料亭。接客、料理、そして酒、すべてにおいて不備は許されません。その緊張感の中で20年以上も選ばれ続けている「菊水の辛口」の安定感は、底知れないものがあります。

「老若男女、みなさんに愛されてきた銘柄です。これからもずっとお付き合いしていく銘柄だと思っていますよ」

  • 八王子 京懐石「鶯啼庵(おうていあん)」
  • 【住所】東京都八王子市尾崎町129 電話 0426-91-5500
  • 【営業】11時~22時(L.O.20時)
  • 【休日】土・日・祝・繁忙期11:00〜
  • 【アクセス】八王子ICそば JR八王子駅より車で20分

出典/SAKETIMES( https://jp.sake-times.com/special/project/pr_kikusui009

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