大人の嗜み 第一回
天然氷で、日本酒オン・ザ・ロック

天然氷を訪ねる。

渡辺商会さんの天然氷づくりの歴史は、軽井沢の発展の歴史と重なります。明治19年、カナダ人宣教師アレクサンダー・クロフト・ショーは、たまたま訪れた軽井沢を故郷トロントに似ていると感じ、別荘を設け、避暑地としての軽井沢の歴史を開きました。やがて政財界人が別荘を建て、夏に訪れるようになったのはご存知のとおり。当時は電気冷蔵庫などない時代。肉などを保存するのに使う氷を作って、別荘まで届けたのが、渡辺商会さんの始まりだそうです。ご主人の渡辺武文さんは「ショーさんが来なければ、ウチの天然氷はなかった」と笑います。

ご主人の渡辺武文さん

氷を引き上げる時に使用していたはさみ
渡辺商会/シブレット
〒389-0102長野県北佐久郡軽井沢町大字軽井沢688 TEL.0267-42-2222
取材こぼればなし その1
ショー宣教師が別荘を建てて以来、軽井沢にはどんどん別荘が建てられました。
夏に避暑にやって来ると、まず渡辺商会さんに寄るのが習わし。
渡辺商会さんでは、どの別荘にどんな大きさの冷蔵庫があるのか全部覚えていて、
その大きさに合った天然氷を滞在中毎日届けていたそうです。
天然氷のかき氷を食べてみた。

氷の白色とシロップの鮮やかさが、夏の光にキラキラ輝いています。ひと口含むと…。最初は微かに氷の食感がするのに、ほどなく口の中で溶けていきます。刺すような冷たさではなく、優しく、それでいてしっかりした冷たさ。水の味のおいしさとシロップの甘さのハーモニーも脱帽ものです。う〜ん、この天然氷のロックで日本酒を飲んだら、さぞかし…。そう思うと、いてもたってもいられなくなりました。
取材こぼればなし その2
冬に落ち葉が落ちきってから氷池を丁寧に掃除し、天然氷づくりが始まります。
氷は半月から25日くらいかけて17〜18センチの厚さになります。
氷が厚くなってから降った雪は取り除けば済みますが、薄いうちに雪が降るとたいへん。
氷と雪が混ざり合って使いものにならないため、涙を飲んで氷ごと壊して、最初から氷作りをやり直すそうです。
渡辺商会さんの天然氷は、直接お店「シブレット」まで来ていただければ、どなたでもご購入いただけます。
残念ながら通信販売などはいっさい行っていないそうなので、軽井沢まで足を運ぶしかありません。
天然氷は、平安貴族の夏の贅。
いまは、日本酒をロックで。


そんなことを想いながら、グラスに天然氷を入れ、日本酒を注いでみました。透明でキレイな天然氷は、見た目にも涼やか。氷とグラスが奏でるカラカラという音も涼しさを誘います。日本酒と氷の微妙に違う透明感…。もう待ちきれません。
天然氷の日本酒オン・ザ・ロックは、ひと言で言うと「さすが!」。ただ冷たいだけでなく、まろやかながらもしっかりとした冷たさ。「暑い夏はこれだ!」と思える冷たい旨さが広がりました。氷が溶けると日本酒が薄まってしまうのでは、なんて声もありますが、心配は無用。水そのもののおいしさもあるので、むしろ、別世界・別次元の旨さを醸し出してくれそうな期待さえ膨らんできました。日本酒オン・ザ・ロック。できるなら、天然氷で。新しい贅沢の提案です。
日本酒をロックで。
あり?なし?
日本酒をロックで飲むなんて!と怒り出す方もいらっしゃるかも・・・。
そこで、若い世代の方はどう思っているのか簡単な調査を実施。
原宿と新橋で20代〜40代を中心に聞いてみました。
なんと、予想に反して、「日本酒をロックで飲むのはあり」という方が6割を超え、
意外にもサラリーマンの街・新橋の方が「あり」の割合が多い結果。
時代とともに、日本酒の愉しみ方が変化しているのかもしれませんね。
そのままでもロックでも旨い。
ふなぐち菊水一番しぼり。
